Riki.少女の名前

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理樹「え?」 振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。 僕と同じく驚いてその娘を見ている鈴と同じ僕たちの学園の女子の制服を着ている。 金髪の長髪が揺れ、鳥のような白い羽が目立つ。 青空のような純粋な蒼い瞳。 僕はこの瞳を見たことがある。 いや……彼女自身を知っている気がした。 彼女の陶器のような傷一つない白い肌が、僕たちのバスに乗っていないことを物語っている。 ?「……間に合って良かった」 彼女はボソリと呟く。 僕が彼女のことを思い出そうとする直前、目の前に白いものを差し出されて、一瞬だけ思考が止まった。 ?「これを使いなさい」 それは探し求めていたものだった。 それのおかげでなんとか恭介の傷口に巻きつけ、止血することができた。 これで恭介もきっと助かる。 みんな、無事だ。 僕は少女のほうに振り向く。 少女は無表情に、黙って僕の顔を見返した。 お互いになにも喋らない。 僕はただ、少女を観察した。 本当にどこかで見たような容姿。その顔。 だけど、思い出せない……。 さっきは思い出せそうだったのに、何故か今となっては記憶がおぼろげだった。 そんな僕の顔を見て、少女はすこしだけ唇を噛んで俯く仕草を見せた。 理樹「ど、どうしたの…?」 ?「……なんでもないわ」 顔を上げた少女は、気の強い表情に戻っていた。 聞いたことのある声。だけど思い出せない。 理樹「あの…。さっきはありがとう」 ?「……………」 何故だろう。彼女はすこし悲しそうな目をしていた。 なにか言いたげに彼女は口を開きかけるが、止めた。 そういえば彼女はなんでこんなところにいるのだろうか。 見るからに彼女はクラスでは見かけたことがないから、おそらく別のクラス…… つまり、僕たちのバスとは別のバスに乗っていた子だろう。
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