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鈴「あいつは本当に一番ジュウショーなのか?ベッドで笑いながら漫画読んでたぞ。きしょかった」
理樹「あはは、恭介らしい。でも……」
一番重傷だったはずなのに、そうは見えなかったということは良いことなのだ。
それだけ恭介も回復しているということだ。
鈴「それで持ってきた」
理樹「え、なにを?」
鈴「これだ」
言って、鈴が掲げたのはズシリと重々しそうなものが入ったビニール袋だった。
その中から、鈴は一冊の本を取り出して、僕に手渡した。
理樹「漫画?」
これは確か、教室や寮の部屋で恭介がいつも読んでいた、恭介の大好きな漫画だったと思う。
鈴「恭介からだ。『一日中ベッドなんかに寝てばかりだと暇だろう?持ってけ。暇つぶしにはなるぞ』って恭介が。ちなみに恭介のオススメだそうだ」
ありがたい。
病院の生活というのはこれ以上の暇はない。
一日中ベッドに寝て、出歩きまわることもできない。
鈴みたいにできたとしても、病院の中で暇をつぶせるところなどあるはずがない。
どちらのせよ、暇なのは変わらない。
こうして本を読んでたけど、恭介からの漫画は本当にありがたかった。
理樹「ありがとう。鈴も読んだら?」
鈴「ん。あたしはいい」
理樹「え? でも暇じゃない」
鈴「大丈夫だ。あたしには場所があるからな」
理樹「場所?」
鈴「この病院、中庭があるだろう。そこに可愛い猫たちがいてな。そいつらと遊んでるから全然平気だ」
理樹「へ、へぇ…」
こんな病院の中庭に猫なんかいるんだ……。
というか、それは良いことなのだろうか?
でも、鈴が良いなら、良いかもしれない。
鈴「それじゃあ理樹。あたしはそろそろ行くぞ」
たぶん今話してた中庭にかな?
理樹「うん。見舞いに来てくれてありがとう」
鈴「礼はいい。それより早く治せよ、理樹」
理樹「うん」
最後に鈴は微笑んでくれると、髪留めをチリンと鳴らしながら、部屋を出ていこうと背を向けて歩き去る。
ドアを開けて出ていこうとした鈴に、僕は声をかける。
理樹「そうだ鈴! 恭介に『漫画ありがとう』って伝えておいて!」
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