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記憶だけを受け継いだあたしは、再び彼と再会できる日を待った。
あの土砂崩れから助けられ、あたしは父とともに祖国の日本に帰国した。
あたしが日本に帰ってきたときには理樹くんに会うことはできなかった。
理樹くんの家は、理樹くんの両親が亡くなったことで理樹くんは親戚筋の家に移ったらしい。
あたしは理樹くんと出会える日をどこまでも待った。
成長し、あの虚構世界のあたしに近付いたあたし。
あたしの手にかかれば理樹くんの学園を探しあてるなんて造作もないことだった。
学園の名前も場所もあの世界で既に知っていたから、覚えている名前と場所を探しあてれば良いだけの話だった。
そしてあたしは理樹くんの学園に入学した。
初めは、そして上級しても、あたしは理樹くんとは別のクラスだった。
理樹くんはたぶんあたしのことは覚えていない。
あたしから一方的に行っても理樹くんは困るだけだろう。
まだ、理樹くんの中ではあたしは初対面の人間なのだ。
いや、正確にはこの現実世界でもあたしと理樹くんは幼いころに出会っているから初対面ではない。
日本から離れ、あの事故に合う前、あたしは日本にいたころ、近所の仲の良い男の子の友達とサッカーをしたりして遊んだ記憶があるからだ。
その男の子こそ、理樹くんだった。
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