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その風船が割れたような軽快な音に、僕は無意識にビクッと肩を震わせて足を止めてしまった。
音の聞こえたのは、前方だった。そしてその先を見てみると、そこは闇に支配された廊下。
だけど廊下の闇のずっと向こう、ぽっと灯る光が見えた。たぶん、遠くの教室に明かりが点いているのだろう。
誰かいる?
僕の足が方向転換して、光が点るずっと廊下の先の教室へと足を忍ばせた。
その教室は、僕たちの教室だった。
僕はおそるおそる、僕たちの楽しい日常が繰り広げられる馴染みの教室を覗いた。
いつもの教室も、夜間ということもあってなんとなく未知な空間に思えた。
理樹「………」
頭だけを教室に覗かせてみると、一瞬――ウチの制服を着た一人の少女の背中を隠すほどの長髪が見えた。
理樹「え?」
しかし、それも本当に一瞬。
瞬きをした時にはバツンと天井の電気が落ちると、あたり一帯が完全に闇に支配された。
なにかが動く気配、机がガタガタと何かにぶつかる音だけが聞こえた。
闇に目が慣れるまでじっと待った後に、僕はようやく教室の電気を点けた。
そこはいつもの教室。しかし確かに誰かがいたのだろう。
綺麗に並べられていたはずの机が一部だけズレていた。
きっと犯人(?)は相当慌ててここから机にぶつかりながら出ていったと思われる。
そりゃそうだ……こんな時間に教室なんかにいて誰かに見つかったら慌てて逃げたくなる。
それに僕だって今や同じ身分だ。
一瞬だけ見えた少女の後姿。どこかで見たような……?
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