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あの優しかった世界を、痛みを、温もりを、幸せを…!
大好きだった彼を……!
『沙耶』
彼の声が聞こえた。
幻聴か。
幻聴でもなんでも良い。彼の声が最後に聞こえるならば。
その声が、あの世界の記憶を思い出させた。
あの世界で、あたしは地下迷宮で彼とともに……
理樹くんとともに秘宝を目指して闇の執行部という敵を倒しながら進んでいた。
その途中で、あたしたちは弁当を広げていた。
休息だったと思う。
そしてその弁当はあたしから理樹くんへの最初で最後の手作り弁当だった。
あたしは下手な誤魔化しを言いながら顔を赤くして、理樹くんもあたしに色々とツッコんだりしてくれて、恥ずかしかったけど楽しかった。
そして落ち着いたころ―――あたしは彼と話をした。
沙耶「ねぇ、理樹くん」
理樹「なに? 沙耶」
あたしの作ったのり弁当を食べながら、理樹くんがあたしのほうを見る。
沙耶「この地下に眠る秘宝ってなんだと思う?」
理樹「金銀財宝のようなものじゃなく、革新的なものなんでしょ?」
沙耶 「そう」
あたしが頷くと、理樹くんは箸を空に持ちながら、考える仕草でう~んと唸った。
理樹「うーん、なんだろうね……UFOの推進エンジンってのはどう?」
沙耶「なるほど。それは革新的だわ。アメリカもロシアも躍起になるわけだ」
どこかのスパイ映画のような内容を言ってみる。まぁあながち間違いではないし、実際あたしは本物のスパイだ。
理樹「え? 本当にそうなの?」
あたしの言葉に、理樹くんはきょとんとした表情になる。
沙耶「さぁ、どうだろうね。見てみるまでは」
理樹「沙耶はなんだと思うの?」
沙耶「んー…」
目を瞑り、しばし考える。
沙耶「あたしの推測ではね……」
少しだけ間を空けて
沙耶「秘宝は、タイムマシン」
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