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そして、世界は終わり。
現実に戻ってきた。
あたしはもう助からないだろう。
土砂に身体のほとんどが埋もれて、自分でもわかるくらいの大怪我をして動けない身では、あたしに助かる術などない。
もう、いいんだ……。
あたしはここで死ぬんだ。
最後に、あの世界を体験できて、そして思い出すことができて……
嬉しいなぁ。
あたしはこの現実の世界とも別れるために、まぶたを閉じようとした―――
―――あきらめるのか?
閉じかけたまぶたが、不意にかけられた声によって止まる。
だれ?
あたしは、この声を前も聞いたような気がする。
そう、あたしをあの世界に誘ってくれた、あの声……。
―――すべてを諦め、すべてを捨てるのか?
―――その思い出も、これから訪れるであろう人生を、お前は捨てるのか
好きで捨てるわけじゃない。
だって、あたしはもう助からないんだ。
あの世界には戻れないんだ。
―――そうだ。確かにあの世界には戻れない
―――だが、あの世界と似たこれからの世界に行くことができる
あの世界と似た、これからの世界……?
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