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〈想い想われフりフラれ。〉
部屋に響く、甘い嬌声
肌と肌とが重なり合う音
重なり合って生まれる
淫猥なメロディー
いつものように情事を終えた佐助は、薄い襦袢を肩からかけただけの姿で一人、布団の上に座っていた。
先程まで体を重ねていた小十郎は、情事が終わると直ぐに風呂へ向かって、感じていた体温もすっかり冷めている。
みんな、いつもの事。
それでも、小十郎が居た場所を撫で、僅かに残る温かさに悲しくなってしまう。
そんな自分に軽く笑うと、風呂から上がり、佐助の香りを全て落とした小十郎が障子を開いた。
「…どうした?一人で笑って、何してんだ。」
小十郎の目にどう映ったかはわからないが、きっと随分滑稽だったのだろう。
少し怪訝な表情を浮かべた。
すると、いつもなら言うはずの無い
言ってはいけない言葉が、つい口をつく。
「そんなに…そんなに困るの?竜の旦那にバレるのが。」
何で言ってしまったのかと、後悔しても後の祭。
後悔先にたたずとは、よく言ったものだ。
「…すまねぇ」
小十郎は、暗い表情で顔を背けてしまう。
ほら、ね。
だから今まで言わなかったのに。
この人の中で、一番大切なのは独眼竜。
わかってる。
「ううん、ごめんね右目の旦那。俺は平気だよ。」
強がってはみても、どうしても何処か隠しきれない部分があるのか、小十郎は舌打ちを一つしてから、もう一度謝罪する。
同時にギュッと抱きしめられた。
強く、それでいて優しく。
ふいに涙が出そうになるのをグッと堪え、もう一度笑顔を作る。
「気にしないでってば。俺様忍だよ?こういうの慣れてるから平気。だからさ、竜の旦那を大事にしてあげて?あの人は俺と違って、あんたが居ないと駄目なんだから。」
精一杯の強がり。
お願い、見透かさないで…
これ以上、愛を囁こうとしないで。
そんなことをされたら
貴方の愛を欲してしまうから。
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