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『………』
ぐっと握り拳をつくって気合いを込めると、押し入れから布団を取り出す。
いつものように敷くと、掛け布団をぐるぐる巻きにして入れた。
ちょうど、人が布団の中で蹲ってるように。
『…!』
雨音と混ざって、バタバタとした足音が聞こえてきた。
そして、聞き慣れてしまった人の叫び声。
『(始まった…)』
芹沢鴨の暗殺。
急いで鞄を風呂敷に包んで持つと、障子に駆け寄る。
そろりと障子を開けて外を確認すると、幸いにも部屋が遠いため、人影は見えなかった。
雨が降ることは分かっていたため、傘は用意してある。
草履は外に置いてあったから濡れてるけど、今はそんなこと気にしていられない。
傘を開き草履を穿くと、自分の部屋の隣…永倉の部屋を見た。
ぐっと唇を噛み締め、傘の柄を握り締める。
『さよなら…永倉さん』
ぽつりと呟いた言葉は、雨に消えた。
バっと背を向け、屯所の裏口へと走り去った。
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