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妙な沈黙は、年号も変わるんじゃねぇかと思うぐらいに長く感じたけど、シマウマの檻に着いたら、なんつうか、意外と象の近くだ。
まあ、ショボい動物園だもんなぁ。
狭いに決まってる。
「シマウマってさ、地肌は何色なんだろね。」
アサミがシマウマに手を伸ばしながら尋ねてきた。
もちろん、シマウマに手が届くわけないんだけど、俺は「ダメだ」と言いながら、手首をつかんで下ろさせた。
「無難に考えたら、肌色かグレーかなぁ。」
だいたい、目の前にいるシマウマの肌なんて、俺の人生にこれっぽっちもかかわるはずがねえ。
そんなの知らねえよ、と思いながらも、アサミの質問の面白さに惹かれた。
「案外シマシマだったりしてな!つか、シマの下地は白なんだー。白に黒のシマなんだなぁ。」
檻の向こう、シマシマはこちらを気にする素振りも見せずに草をはんでいる。
アサミは無言。
右手の中で、ピクッと何かが震えた。
「?」
右手を見ると・・・。
「わぁ!ご、ごめん!手首とったままだったな!」
シマウマの肌に気を取られて、アサミの手首、つかんだままだったぁ!!
俺の人生にめちゃくちゃかかわってきやがったぁ!!!
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