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僕は、八雲空。普通の高校生だ。
蒼空高校に通って一年。友達はあまりいないが、部活動には入っている。……まあ、先輩らがいなくなったから今年から部員が僕だけなんだけど。
僕が一年生の時は、三年生しかいなかった。だから今年入る一年生が最低でも三人は入らないと廃部だ。
今の時代に文芸部なんてトコに入るやつなんかいないだろうし、僕は廃部したあとどうしようか考えていた。
夜空を見上げる。夜空は好きだ。なんだか、僕の全てを優しく包んでくれるような気が──
「はーい、プロローグ終わりっ! 早く本編いきますよ、空センパイ!」
……優しく包んでくれるような気がするんだ。
「無視ですか!? こんなに可愛い後輩が呼んでるのに! かくなる上は、しぃ、サーシャ!」
「はぅぅ、なんですか?」
「……大声で呼ばなくても聞こえるのに」
「二人とも手伝って! 空センパイが一人でプロローグ語ってるから!」
「あ、しぃもプロローグやりたいです」
「いや、プロローグをやってくださっているのなら、邪魔をしちゃいけないんじゃ……」
「サーシャは甘いよ! まったく、サーシャは少し胸が大きいからってすぐそれだ」
「っ!? さ、桜! 先輩の前でなにを言うの!?」
「うりうり~」
「ひゃっ! ちょ、やめ……!」
「うー、サーシャちゃん確かに大きいですね……」
「白来まで! んっ……ちょ、そこはダメ……!」
「うるせぇぇ───────────────────────────ッ!!!」
「うわーお、すぐキレる現代の若者怖いわー」
「人のプロローグ邪魔するなよ! せっかく語りをやってたのに……あと紗々へのセクハラやめろっ!」
僕が咎めると、桜は紗々から手を放す。ちなみにサーシャとは紗々のあだ名だ。
「白来、お前も桜よりはそれなりに信じていたのに……」
「しぃは失望されましたかっ!?」
しぃ、とは白来のあだ名。何故か白来は自分を「しぃ」と呼ぶみたいだけど……。
挟霧 紗々(さぎり しゃしゃ)。名字と名前を合体させて「サーシャ」。
藍原 白来(あいはら しるく)。名前の「しるく」から「しぃ」らしい。
ちなみに最初から煩かったのは真山 桜(まやま さくら)。あだ名は特にない。
全員、無事に三人集まった一年生だ。
この話は、そんな三人と僕が綴る日常の物語。
……正直、面白くはないと思う。
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