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「はぁ……」
思わず嘆息をする。
今日を含めて三日間。それ以内に部員が見つからなければ文芸部は終わる。
「……まあ、終わったら終わったでいいんだけど」
元々、文芸部自体に思い入れはない。先輩に知り合いがいて、そのよしみで入っただけだ。去年も存続ギリギリラインだったからなぁ……。
それでも、やはりなくなるというのは少し悲しい気がする。
まあ、今更どうこう出来るわけもないし……部室で待ちますか。
そうしてパソコンをいじりながら待っていると。
「あ、あの……」
「はい? って、うわぁっ!」
扉を半分だけ開け、こちらを見ている「目」があった。
「あ、すみません……しぃ、初対面の人と目を合わせられないんです。きっとそういうビョーキなんです。だからこれを……」
奥から姿を現したのは、少女だった。リボンからして一年生か。白というより銀のセミロング。おとなしそうな印象を受ける。
しかし、人見知りは別に病気ではないと思うが、だからといって額に「目」を書くのは少し病気かもしれない。
ていうか、額に目を書いても意味ないだろう。中の様子が見えるわけでもなし。
「すみません、失礼ですよね……取ります」
……取ります?
疑問に思ったが、その少女は額の目を「ベリッ!」とはがした。
シールだったらしい。ますます意味不明だった。
「あの……ここ、文芸部ですよね?」
「あ、ああ……そうだよ」
登場であまりにも脱力してしまっていたため、反応が遅れる。
改めて挨拶をする。
「ようこそ文芸部へ。僕は部長の八雲空。部員は先輩らが卒業されたから僕しかいないけど……まあ、座って」
パイプ椅子を差し出す。よく考えたら、部員が来た場合にどういう対応をすればいいか分からない……。
去年は先輩にほぼ無理矢理入れられたし……勧誘ってどうするんだ?
「ええと……あ、そうだ。キミの名前は?」
尋ねると、少女は跳ねるようにビクッとした。
緊張しているのだろうか。そこが一年生らしく、少しおかしくなった。
「えと、しぃは、しぃです」
……うん?
そういえば最初も「しぃ」って言っていたな……。
「いや、だからキミの名前……」
「ですから、しぃはしぃですよ」
…………。
……さて、こいつはなかなか手強いぞ?
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