50人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
地獄の炎は纏わり付くようにして、しつこく、執念深い熱気でもって、第六階層に住むものどもに容赦のない責め苦を与える。しかし、時としてそれは第六階層を管理する者とて例外ではない。
地獄谷町針山三丁目にある業火(ごうか)耐熱式住宅に住んでいても、その猛火は凄まじき熱によって防熱機能を看破してきた。
それは、つまり、地獄人間の僕ですら、「あっちいぃぃぃわ!」と叫ばせやがるほどの暑さだ。
ふと覗いた窓の外では、地獄創世期より絶えることのない炎が色濃く舞い踊り、外界をチロチロと舐めている。
外を歩く仲間の地獄人間が、次々と火だるまになっとるのを僕は眺めていた。
いや、凄い猛暑日だからって、はしゃぐなや。
地獄遊戯、火だるま鬼ごっこ。
高熱のあまり、思考がおかしくなったときやる遊び。
皆がウギャーとか叫びながら、走り回ってるが、あれは喜んでる証拠や。
それよりも、僕には問題がある。
昼夜の存在しない地獄といえども、就寝時間はちゃんとある。それが、今の時間帯なのに、こう暑くては眠るどころやない。
恐らく外気温管理局が設定温度を間違えたに違いない。第六層を管理している地獄人間が、汗をかいてへばるなんてありえへん。閻魔が善人になるくらいありえへん。
確か管理局局長は魅蜘YO(みちよ)三世。そういえば最近、あの女、彼氏が出来て浮き足だってたわ。クソ、ちゃんと管理をしっかりしろや。もし、デートしている場面を見かけたら、二人仲良く地獄パ~ンチをお見舞いしてやるわ。
目が冴えてしまった僕は仕方なく、水を飲み、携帯をいじってみることにした。そして、友人である赤鬼の一言を思い出した。
『銀河連邦公認のSNSサイトで、モ○ゲーってあるだろ? あそこに面白い小説あるから読んでみろよ? それに、お前、小説書いてるから投稿してみたらどう』
その時は赤鬼の誇らしげな顔にムカつき、目つぶしをして丁重にお断りさせていただいたのだが、悪くないかもしれん。
愛しさと切なさと心づよさを噛み締めながら、僕はモ○ゲーの入会画面に入る。
最初のコメントを投稿しよう!