第一章 祝モ○ゲー入会

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 地獄の炎は纏わり付くようにして、しつこく、執念深い熱気でもって、第六階層に住むものどもに容赦のない責め苦を与える。しかし、時としてそれは第六階層を管理する者とて例外ではない。  地獄谷町針山三丁目にある業火(ごうか)耐熱式住宅に住んでいても、その猛火は凄まじき熱によって防熱機能を看破してきた。   それは、つまり、地獄人間の僕ですら、「あっちいぃぃぃわ!」と叫ばせやがるほどの暑さだ。    ふと覗いた窓の外では、地獄創世期より絶えることのない炎が色濃く舞い踊り、外界をチロチロと舐めている。  外を歩く仲間の地獄人間が、次々と火だるまになっとるのを僕は眺めていた。  いや、凄い猛暑日だからって、はしゃぐなや。  地獄遊戯、火だるま鬼ごっこ。  高熱のあまり、思考がおかしくなったときやる遊び。  皆がウギャーとか叫びながら、走り回ってるが、あれは喜んでる証拠や。  それよりも、僕には問題がある。  昼夜の存在しない地獄といえども、就寝時間はちゃんとある。それが、今の時間帯なのに、こう暑くては眠るどころやない。  恐らく外気温管理局が設定温度を間違えたに違いない。第六層を管理している地獄人間が、汗をかいてへばるなんてありえへん。閻魔が善人になるくらいありえへん。  確か管理局局長は魅蜘YO(みちよ)三世。そういえば最近、あの女、彼氏が出来て浮き足だってたわ。クソ、ちゃんと管理をしっかりしろや。もし、デートしている場面を見かけたら、二人仲良く地獄パ~ンチをお見舞いしてやるわ。  目が冴えてしまった僕は仕方なく、水を飲み、携帯をいじってみることにした。そして、友人である赤鬼の一言を思い出した。 『銀河連邦公認のSNSサイトで、モ○ゲーってあるだろ? あそこに面白い小説あるから読んでみろよ? それに、お前、小説書いてるから投稿してみたらどう』  その時は赤鬼の誇らしげな顔にムカつき、目つぶしをして丁重にお断りさせていただいたのだが、悪くないかもしれん。    愛しさと切なさと心づよさを噛み締めながら、僕はモ○ゲーの入会画面に入る。
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