第二章 変わらぬ風景

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 恐らく放り投げるようにバットを振って、残った一本を使うようだ。野球映画やスター選手の真似をして素人がよくやりそうなことだ。  アバターがバットを振った。  五、六本のバットは残ったままだ。  そして、バッターボックスで身構えるアバター。 「ムリムリ!! 君ムリだから。そんなバット持ったらダメだから」  審判が慌ててバットを取り上げる。 『えっだめなの?』  僕はベンチでずっこけた。 「どこのルールだよ」  小声の呟きも当人には届かないだろうが。  しかし、こんなの奴にとっては序の口か。僕はすぐに気持ちを落ち着けて、大きく欠伸をする。  どうせ、空振りか三振かボテボテのゴロで終わるんだろうな……。  半ば諦めの目でアバターを見つめていた。何故か、やつはバットを逆手に持って構えだした。  えっ、そんな打ち方聞いたことないんだけど。    そして、気が動転しているうちに投手の第一球が放り込まれた。 「ボール!!」  審判の声高らかな宣言。アバターは微動だにしなかった。投手の投げた球は、およそ145キロくらいか。
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