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休み時間。
忘れてしまった教科書やら、英語の本文訳を借りに来た奴らで教室の出入り口は封鎖される。
「おまえ、フラれたんだって?」
クラスメイトの岸本だ。
俺に彼女ができたとか、フラれたとかいったときには必ず現れる。
「あいつが浮気したんだよ。俺は何も悪くない」
いつのまにか昨日まで最愛の人だった彼女を、あいつ呼ばわりするほどになっていた。
「浮気ねぇ……おまえの魅力が足りてないんじゃないか?」
「おまえに言われたくないな。ここ最近おまえに彼女できたことが、あるか?」
「ふ、俺はこういうことには慎重なんだよ」
「うそつけ」
岸本に彼女ができたのは、高校に入ってから1回だけだ。
これだけ聞けば、岸本は慎重派だと思える。
しかし、こいつが高校入ってからこれまでの1年間に告った人数は8人。
どこが慎重なのか…。
そして成功したのが1人。
数打てば当たるという奴なのか。
残念ながらその彼女と言うのも、浮気が原因で破局。
しかも浮気したのは岸本。
今の俺から見れば最低だ。
「ま、おまえに新しい彼女ができることを祈ってるよ」
岸本は俺に彼女ができれば羨ましいとか言うくせに、フラれたと聞けばわざわざ嫌味を言いに来る。
「で、お前の用事はそれだけか?」
「おいおい、俺がわざわざ嫌味を言いに来るような奴だと思ってるのか?」
「当たり前だろ。今までそうだったじゃないか」
返す言葉がないのか、言葉につまったらしい。
それでも何かを言い返さなければと必死で言葉を探している。
「……ええっと、あのなぁ…」
本当に嫌味を言うためだけに来たらしい。
困っている岸本を救うかのように、授業開始のチャイムが鳴り始めた。
「助かった…じゃあな」
今のこの言葉で岸本がわざわざ嫌味を言うためだけに来たっていうことが証明けされた。
このときばかりは岸本は嫌なヤツだ。
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