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いまいちやる気がないままこの日の授業は終わり、放課後。
誰もいなくなった教室で、俺は1人、ただボーっとして窓の外を見つめている。
視線の先は女子テニス部。
男臭い野球部なんて見てもつまらない。
どうせ見るのなら色気があるほうがイイ。
しばらく見ていると、こちらの視線に気づいたのか、チラチラとこっちを見てくる人がいる。
俺はそのたび、野球部のほうへ目線を移し、野球部のファインプレイにガッツポーズを取るふりをする。
「こんな所にいたんだ」
突然、背後から声がしたので、俺は慌てて学校の隣のビルに視線をあわせた。
声の主は風間成美。
中学からの女友達だ。他の女友達と比べると結構仲がイイ。
彼女がいた頃には、それが原因で、ケンカしたこともある。
「どうしたんだ?」
俺は風間に背を向けたまま訊いた。
「一緒に帰ろうと思ってね。随分探したんだから、断るなんてなしだからね」
「そんなの、一方的じゃないか」
風間のほうに向き直った。
グラウンドからの声が俺の背中で反射した。
「一方的でもいいの!とにかく、帰ろっ!」
教室の中に夕日が差し込んできた。
俺はそれを堪能する間もなく、風間に腕を引っ張られ、教室から引っ張り出された。
結局、風間と一緒に帰ることになった。
だが話をしようという気になれない。
風間のほうは、何か言いたそうにしているが、なかなか言い出せない様子だ。
「なぁ…」
思ったことがあるので、俺が一声かけた。
「なに?」
「もしかして、俺を慰めるために無理に誘ったのか?」
「え?…そんなこと………」
一気に気まずくなってしまった。
きっと、風間も切り出すタイミングを見計らっていたのだろう。
マズいことを言ってしまったと心の中で反省した。
気まずい空気が流れたまま、二人の足取りは遅くなった。
「ちょっと寄り道していかない?」
風間が急に立ち止まった。
「いいけど、どこに?」
「景色のきれいな場所知ってるの。ここから結構近いんだよ」
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