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ある街の一角。
人通りの少ない通路の先にそれはあった。
死神の祭壇
昔の人々はそう呼んだ。
元々薄気味悪い場所だからか、子供の肝試しには人気があった。
しかしおかしな事に肝試しに行った子供は一人も帰って来ず、気になった若い男達はその場所に確かめに行った。
が……その若者達もほとんど戻って来ず、人々は祭壇を恐れ、これは神隠しだと決めつけ、祭壇に近付くのを止めた。
その後、祭壇は誰も近付く事無く今も残り続けている。
「なあ、何かこう言う話聞くとワクワクしねぇか?」
そう言うジャンルが大好きな蒲原琢磨(16)は言う。
「普通怖い話し聞いてテンション上げる奴なんかいねぇよ。」
海真桐人(16)は言う。
「でな、そこに行った人の中で昔一人だけ奇跡的に戻って来た奴がいたんだ。」
そしてその人は言った。
祭壇には古い人間の白骨や、若者達の変死体が転がっていた。
そしてそこには一人の巫女がいて、その人に言ったらしい。
「試練を受ける…? もしも試練を受けて、その試練を乗り越える事が出来れば、あなたに望む力をあげる……。」
その人は力を望んだ。
誰の為でもなく、病気で寝込んでる妹の為に。
大切な人を救う力を求めた少年は、試練を乗り越えたのだ。
「あなたの心の強さ、確かに見届けたわ。
望み通り、あなたに力をあげる。
それをどう使うかはあなたの自由よ。」
巫女は言った。
「その日その男はその事を村の人に伝えた。
村人はその日からその場所を死神の祭壇と呼び、
死神神社を建てて、怒りを静めたという。」
「昔話にしては本格的だな。」
桐人はめんどくさそうに言う。
「まあな。でも本当だって噂だぜ?」
さっきまで語っていた、蟹囲健人は言う。
「あ~行ってみたいよな、桐人!」
蒲原は子供のようにはしゃいで言った。
「行きたいのはお前だけだ、バーカ。」
(そもそも力なんて手に入れてどうすんだよ。)
今までの話を全く信じていなかった桐人は窓を見ながら溜め息をついた。
そして放課後……。
「桐人君!」
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