1211人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
メールを打ち終わった慎一は
『ゴメンな。さぁ行こう!』
と言って私を促した。
会場となっているクラスに着くまで私達は次のデートはどこに行くか、今日は学校が終わったら写真を撮って打ち上げも一緒に行きたい…そんな話をしながら歩いていた。
ただ、その会場に着くまでの10分程の間、慎一の携帯はずっとメールの着信ばかりで話が進みにくかった。
私は昨日も相手をしてもらえなかったのだから今日くらいは私だけと話して欲しくて、ついに慎一に言った。
『さっきから、ずっとメールだけど誰?私との会話に集中して欲しいんだけど…。』
すると慎一は言いにくそうに私に答えた
『えっと…実は樹里からのメールなんだ。あいつ今日は友達と遊ぶ約束が無くなったらしくてメールで相手して欲しい…みたいな事を言ってきててさ。』
私は腹が立った。
『今日は昨日の埋め合わせをしてくれるって言ったじゃん!メールなんかしなくても家に帰ったら話せるんだから今は私と話してよ!』
私は初めて怒った。
いくらなんでも今日だけは邪魔して欲しくない。
私と慎一は樹里ちゃんみたいに家でも話せる訳じゃないんだ。
『今のこの時間』を大切にしたい…。
そう思って私は言った。
すると慎一は私が怒った事に対して驚きながらも
『分かった。もうメールきても放っておくし、今日は明日実だけと話すから。』
そう言って私の手を握り、また歩き始めた。
…私達が手を握ったのはこの日が初めてで、私は戸惑いながらも拙く手を握り返した。
最初のコメントを投稿しよう!