第三章

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 色んな言葉がのどをついて出かかった。けど、僕は気の利く人間じゃないから、こんな時になんて言葉をかければ良いのかわからなかった。  髪染めたの? とか、カラーコンタクト? とか、ふざけようは有ったけど、ふざけちゃいけない気がした。 「おはよう」  結局はごく自然に、挨拶を返すことしかできなかった。 「久しぶりだね、こーちゃん! 長い間心配かけてゴメンね」  顔の前で手を合わせ、片目を瞑って謝ってみせる依舞は、確かに僕の知っている懐かしい依舞だった。
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