第三章

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 自分の事をなんと呼ぶか、その程度の事を……と思う人もいるかもしれない。だが、これは大問題だ。  依舞は一週間前、自分のことを“私”と呼んでいた。  だが、今は自分のことを“依舞”と呼んでいるのだ。  これが逆ならば頷ける。自分のことを“私”と呼ぶ小学生の女の子は少ない。大概は下の名前で呼んだりするものだ。  逆に高校生、もっと言えば社会人になってまで自分のことを下の名前で呼ぶ人は少ない。  加齢に伴い、一人称が“私”になるのは頷けても、その逆は“通常は”有り得ない事だと僕は思う。
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