第三章

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 いつからだろう、依舞が僕を置いて先にクラスに行ってしまうようになったのは。  気づいた時には校門からは離れ離れだった。  どうせクラスは一緒なのだから、一緒に行っても良いようなものだけど、すぐに依舞は消えてしまう。  そして、僕が教室まで来ると何事も無かったかのように自分の席から「おはよう、こーちゃん」と声をかけてくるのだ。  なんの考えがあるのかは知らないけど、教室で迎えてくれる依舞はいつも笑顔だったから、それでも良いと思えた。  そう、こうして今日も教室の戸をくぐれば依舞の笑顔が――――。
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