一日の始まり

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夜の屋敷は、所々にある蝋燭だけで照らされている そのためか、ご主人さまが僕の手をぎゅっと掴んできた こう見えても、ご主人様は暗いところが苦手なのだ その姿は、闇に舞う蝶とソックリだというのに 「僕の手を握っててください。危ないですから」 「うん・・・・ありがとう」 ご主人さまの口から放たれる声が、僕の心を震わせる これが、愛するということなのだろうか ご主人さまの全てが、愛しくてしょうがない 怖がる表情も、握りしめられる手の温もりも 全てが愛おしいと思うのは・・・・やはり、間違っているのだろう いや、間違っていなかったとしても無駄な感情だということは分かっている ご主人様は、私を人形としか見ていない 感情のないただの人形だと、そう思っていることだろう 普通、人形が感情を得ることはありえない 僕の場合、ご主人様を思うがあまり感情を得てしまったようなものなのだから 異様だと思われても、しょうがない
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