熱

もくもくと家事をこなしながら、私はおかえりのキスを頭の中で何度もシュミレーションした。

帰ってきてすぐにキス

ちょっと焦らした後にキス

油断したところで彼の頬をつつき、振り向いた瞬間にキス

…いやこれは駄目だ。
振り向き様に歯がぶつかってしまうかもしれない。
痛いし、少し恥ずかしい。

そんな馬鹿なことを考えながら、洗濯物を干し、炊飯器のスイッチを入れた。

そうだ、今日はオムライスにしよう。
あったかくて、ふわふわで、何処と無く彼みたいなオムライス。
勿論、彼のオムライスにハートマークを描くのは私の仕事だ。

夏の暑さでふやけた脳みそで、ろくでもないことを考え、ふふふと笑みを溢した。

それが、つい先刻の出来事。