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私はK先生のケータイ電話を握って、廊下を足早に歩いた。
心臓が変になったように感じる。
(先生、メール見てないんだ)
鼓動と共に足が早くなる。
(まだ、
私が行くこと知らないんだ)
ぎゅっと握る手が汗ばむ。
(今なら、まだ…)
そう思った時、固めたはずの決意がどろどろに溶けて流れていくのを感じた。
溶けていくスピードに合わせて、ゆっくりと足が止まる。
(…何も、
なかったことに出来るんだ)
私はちらりと左手で持つカバンに目を落とした。
中にチョコレートが入っている。
昨日、思い立って作ったチョコレート。
ただでさえ嫌いなのに、手作りなんて気持ち悪いかもしれない。
でも、渡したいって思ったから作った。
渡さなきゃダメだって、終われないって思った。
痛くて辛くて苦しいから、
私も卒業しなきゃダメだから。
…でも
でも、それだけじゃなかった。
少なくとも、
先生を好きって気持ちを、
私は嫌いになれなかった。
視線を上げる。
誰もいない教室が目に入った。
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