名前

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それを少年に見せながら美穂が言った。少年はその手紙を受け取って開いた。 そこには『この人の名前は達司(たつじ)です』と書かれていた。 少年は手紙を裏返したりもしてみたが、他に文字はなかった。 「これだけ?」 少年が聞いた。 「うん」 光汰が答えると少年は不安そうな顔になった。 書いてあったのは少年の名前だけだった。 少年のことも、だれが書いたのかさえも書かれていなかった。 「達司・・それが僕の名前・・」 少年が手紙を手につぶやいた。 「そうだよ」 美穂が明るく言う。 「家に入る前に光汰、言ったよね?さっきは急にいなくなってびっくりしたって‥。あれ、どういうこと?」 少年、達司が光汰に聞く。 「えっと、どこから話せばいいかな‥」 光汰が困ったような表情で頭をかきながら言った。 「最初からだよ、最初から」 美穂が光汰を促す。                     
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