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「そうだよ」
光汰が答えた。
「ねぇ、達司君の世界のこともっと聞かせて。達司君のお母さんってどんな人?」
「僕のお母さんは明るくて、優しくて‥」
達司は美穂の問いに答えていたが、急に止まった。
「達司‥?」
光汰が不思議に思い、声をかけた。
しかし、達司には聞こえていない。
達司がお母さんのことを思い出そうとすればするほど、達司の頭の中からお母さんの顔が、声が、消えていくのだ。
「‥いやだ‥いや‥だよ‥消えないで‥」
達司は頭をおさえながら苦しそうな声で呟いた。
「達司君!?」
「達司!どうしたんだよ」
美穂と光汰が声をかけるが、やはり聞こえていない。
「しっかりしろ!達司!」
光汰は達司の近くに行って肩に手を当てて揺さぶったが、反応は返ってこない。
「いや‥だ‥よ‥。うわぁぁぁ」
達司は頭をおさえながら泣き叫んだ。
自分の知っているもの全てが奪われていくように感じてこわくなったのだ。
光汰が達司に呼びかけたが、達司は相変わらず泣き叫んでいた。
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