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「『覇者の鍵』を宿す者は見つかったか?」
少年は膝まずいている男に、静かに声をかけた。
「……いえ、まだ」
男はそのままの体勢で答えた。
「……あれを手に入れた者が、この世界を制す。今度こそは、あの男よりも早く手に入れて見せる」
窓から入ってきた月明かりが少年の顔を照らし、端整な顔が露になる。
その容貌はまだ若いが、瞳だけがそれを裏切っていた。
深い闇を宿した瞳は、憤りと僅かな悲しみに彩られている。
「『鍵』を探せ。そして、邪魔をする者は……殺せ」
少年は一度目を閉じると、迷いを振り切るように再び目を開け、外の月を見上げた。
この世界のどこかに、『鍵』と『あの男』がいる。
「今度こそは……」
少年の呟きは、静かに闇の中に消えていった。
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