互いの印(菊朝)

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いきなり手を取って引かれた。 そして何も言わずベッドの前で止まり、アーサーを振り返った。   「アーサーさん」   にっこり笑う菊はどこかいつもと違った。   「今日は私があなたを虐めて差し上げます」   「え゛!?」   グイッと引き寄せられたかと思うと唇が柔らかいもので塞がれていた。 いきなりの行為に目を瞠るアーサーをよそに、菊は背伸びをして襟を握りしめて何度もキスをする。 いつになく積極的な菊に押されていた。   二人はそのままベッドに倒れ込んだ。いつもはアーサーが上になるのに今日は下敷きになっていた。   「…んっ//………き、く………///」   「ふふっ、アーサーさん顔が真っ赤ですよ。いつものようなうまいキスはしてくださらないんですか」   まるで楽しむかのように笑う菊はいつもの可愛いらしさと違う、妖艶でどこか黒い菊だった。間近でじっと見つめられる。黒い瞳が月光で妖しく光る。
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