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顔を近づけても起きる気配がなかった。疲れているのかと思っていたとき。
(あれ。……この匂いは……)
ほのかに香る甘い匂いにクンクンしてみる。
するとやっぱりする。菊の大好きな匂い。
(………………!)
匂いの元を探り出した。目を瞑って匂いに集中。そして思わず舐めてしまった。
今日は自分でも大胆だと思う。まあ、こんなこともあってもいいか、なんて笑ってみる。
ぺろっと舌先で撫でたそこは寝息が漏れる柔らかい場所だった。
さすがに違和感に気づき、眠たそうに何度か目を瞬かせて焦点がやっとあって。
「………!なッ、なんでッ!」
真っ赤になって後ずさる。予想通りの行動に苦笑しながら挨拶をしてみた。
「おはようございます、アーサーさん」
「あ、ああ。おはよ……って違う!!」
何だか信じられないものを見るような目で見られて、心外だ。
「だだだだって……今ッ、なんか唇に触った」
逃げるアーサーさんをふとんの中で追いかけて捕まえた。
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