early morning tea(朝菊)

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「いい匂いがしたんです。甘い、アーサーさんの匂いと、紅茶の匂いです。飲まれたんですか?」   起き上がろうとするが、服を引っ張られて阻止されて、結局諦めて少し落ち着いて言った。     「ああ。…よ、夜に一杯飲んでから寝たんだ」   「残り香、でしたか。……それにしても美味しく頂きました」     にっこり笑ってみせると、また赤くなった。全くもって照れ屋さんだ。       「なに言ってッ///……………だいたいなんで菊がここに」   「夜這いです。朝方ですけど……いやですか?」     「嫌じゃッ……………ない」     ふふっと笑ってアーサーに手を伸ばす。アーサーはきちんと手を掴んで、側で横になった。   二人は至近距離でお互いを見つめた。   菊は、さっきとは違って大好きな翡翠の瞳が自分を映していることが嬉しかった。 眠った彼も可愛いけれど、やっぱりその宝石のような瞳がみえる方がいいな、と改めて思ったのだ。         「菊………」     「はい?」     「起きてるときに、してほしい」     「?」     「キ、キス//……とかは、起きてるときじゃないと、気づけないと損した気になる、だろ?…だから…///」     途切れ途切れでもちゃんと目を見て言ってくれる。     「……はい。じゃあ、」     そう言ってアーサーの首に手を回す、アーサーは片手で菊の頭を引き寄せた。           その長いキスはほんの少しの紅茶のおかげ。      fin
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