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菊は夢を見ていた。
辛く悲しい夢だった。
時は世界対戦。
身の回りの何もかもが壊れ始めていた。物も人も何かに取り憑かれたかのように戦い続ける夢。
自分もその只中にいた。
誰とも分からない者をばっさばっさと薙いでいく。
白い軍服は自分あるいは他人の血で暗赤色に変わっていた。我を忘れて無心に人を殺める、戦いの意味さえ忘れて。
ふと見覚えのある光を見て立ち止まった。それは他にも似たものを見てきたが、明らかに見覚えがあり、なおかつ自分が見間違えるなんてありえないそれだった。
相手もこちらに気がつき、目を見開いたように見えた。
かつてあんなに近くに感じたはずの緑の瞳は今はこんなにも遠いなんて。
「菊」
「なんですか?」
「こんな平和な時間をお前と過ごせて、その、……幸せだ」
「ふふっ……突然どうしたんです?」
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