夢現(菊朝)

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「いや、何となく。こんな風に菊の家で、隣で、庭を眺める時間が、今の俺には当たり前みたいになってるから」     少し不安な色をした瞳がこちらを向いた。不意に重なった手は心なしか震えていた。それを、大丈夫だ、と思いを込めて握った。       「…………私もですよ。アーサーさんと居られて幸せです」     まるで、この当たり前がいつか壊れていってしまう。そんな不安をあの時感じていたのかもしれない。     幸せすぎて恐い。       幸せすぎて、崩れる時が恐い。                   そんな思いが現実になって二人を襲う。運命とは非情なものだと菊は思った。
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