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「嫌な音、感触を人間から奪って、人を殺める後ろめたさを鈍らせる。だから殺すことに抵抗がなくなる。何人殺しても自分がやった感覚が全くないから」
バッシュは何も言い返せなかった。ただただ下を見ていた。
「もしかしたら銃は、人を殺すことが怖くなったから、そんな感情を忘れて気をもむことなくやるために作られたんじゃないかとも思うんですよ。
刀は殺める酷さを教えるから理性を保てる。銃は理性を奪う」
そこまで言って、銃をきゅっと握った。
バッシュは、この男には銃は似合わない、そう思った。心優しすぎるこやつにはこの武器はきっと違う意味で゙重い"のだ。
暫くの沈黙の間に家へと着いた。ドアを開けると少女が小走りで出迎える。
「お兄様、菊さん、お帰りなさいまし。お昼の用意ができてますよ」
「ああただいま」
「ただいま。いつもすみません」
「いいえそんな!菊さんが来てくださって嬉しいんですよ」
にっこり笑ってキッチンへ戻って行った。
「………守るため。弱肉強食の世で、生きていくため、こちらにも人生がある。殺らねば殺られるのだ。大切な守るべきものを相手に奪う権利はないのだ」
自分にも相手にもそんな権利はないと分かっている。しかし、相手が奪おうと迫るなら、自分は迷いなく撃つ。
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