愛の証~前編 (朝菊)

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アーサーさんと仲良くなって随分たちます。 とても紳士的で格好いい方です。私にはとても良くしてくださって、世界のいろいろなことを教えてくださったり花束まで持ってきてくださるんです。   それがずっと私にだけだと思っていました。アーサーさんの特別になれていたことを、私だけの愛情を嬉しく思っていたのに。               今日もまた。 ここ最近ずっと、心が痛い。アーサーを見る度にいつも違う人と話ししている。菊とは、忙しいらしくなかなか会えない日々を送っているのに久々に会う機会があっても違う人と話している。      ああ、苦しい。 心が締め付けられるようです。 見たくない……そんな、他人に見せる笑顔なんて……。   だめですね。忙しくしていらっしゃるから我慢しなければならないのに。これを嫉妬と言うのでしょうか。    苦笑しつつも、心からは笑えなかった。ずっと何かが引っ掛かったまま過ごしていた。   あくる日もそのあくる日も、アーサーとは一言二言喋るだけで、約束があるからとすぐに仕事へもどってしまう。 別れ際もあっさりしていることに不安は日に日に増して行くばかり。アーサーが居なくなった部屋はいつも静かだった。 今頃外交相手の方と楽しく話して、ディナーでもしているだろうか。そんなことばかりが菊の頭を支配していた。   私だけに優しい。私だけが特別愛されて………。いいえ、違う。あなたは誰にだって優しい。最初から。誰にだって優しい言葉をかける―――――
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