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アルに見つかったあの日から数日経った。いつまでも晴れない気持ちを抱えながらも気丈に振る舞っていた。
「菊?」
「えっはい」
あの日から何となく避けていたアーサーから声をかけられた。
「最近ろくに話も出来てないな……悪いな」
本当にすまなさそうにしている彼になぜか心が痛んだ。思い切って甘えてしまいたくなる気持ちと、疑って遠慮してしまう気持ちが態度として表れてしまう。
「……そうですね…」
「最近付き合いとかいろいろあって上司がうるさいんだよ」
そうですか……
なんて、曖昧な返事を言っているが正直今は話したくなかった。
一緒にいてつらい。
不満をぶちまけてしまいそうになる。
そんな菊の様子にも気づかずアーサーは喋りつづける。
「でさあ、……今度一緒に……」
あぁ。早くここから抜け出したい。今の私は弱すぎて、あなたの全てを受け入れられないのかもしれません。あなたの仕事の付き合いにも理解してあげられないのですから……
「やあ菊っ!ここにいたのかい?………あーアーサー君も」
菊の肩越しにひょいと現れたその人に、付け足しのように扱われてアーサーが突っ掛かる。でも今日は口げんかは始まらなかった。
「悪いね!君と話に来たんじゃないんだよ。菊!アイス!アイス食べに行かないかい☆さぁアイスアイス~」
「わっ!ちょ、ちょっとアルさんっ」
有無を言わせぬ動作でアーサーから菊をふんだくって行くアル。その手は菊の手を繋いでいた。
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