愛の証~前編 (朝菊)

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ある日、アーサーは菊を呼び出した。 会議が終わったあと少し時間をくれ、と言われて菊はアーサーについて行った。   二人きりになった部屋でアーサーが向き直った。         「……菊、       …………別れよう」       「!?……」   あまりに突然の別れ話に言葉が出なかった。 呆然と見やる菊に対し、アーサーは目を合わせずぐっと堪えていた。   思考が追いつかないで、頭の中がぐるぐる廻る。ただ立っているだけの足が微かに震える。 体中が金縛りにでもあったように動かず、ようやく動かせる目がアーサーの手に留まった。     あ…………………       その手には桜色の小さな石がついた指輪が、―――なかった。 代わりに金のリングがはめてあった。 それに気づいた瞬間、一気に思考が巡って、全て、を理解した。     「指輪……してないんですね」   気がつくと口に出してしまっていた。その声は震えていた。 口にしてからやっと悲しみが溢れ出した。 ―――――……
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