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ある日アーサーの誘いでデートに行ったことがあった。
その日はいつもの家でなく、街を歩くデートだった。
並んで歩く時、不意に伸ばされた手を遠慮がちに繋いだ。真っ赤に照れるアーサーを見て菊は幸せを感じていた。
ふと立ち寄った店に、それはあった。
「これ……綺麗です」
うっとり眺める菊の肩口からアーサーが覗き込む。
「ん?指輪か?……緑の石がついてんだな」
「はいっ。とっても綺麗です。私、この色大好きなんです!……アーサーさんと同じ瞳の色だから」
そう言ってにっこり笑って見上げられてアーサーは真っ赤になると、ふいっと視線をずらして
「そ、そんなにす、好きなのかッ?」
「はい」
「っ………///」
急に菊の手からその指輪が取り上げられた。
「あっ」
そのままずかずかと店の奥まで行ってしまい、すぐに帰ってきた。
「ほら……手ぇ///」
催促されるがままに右手を出した。
「……こんな安い石はまだ右手にしかつけちゃだめだからなっ!……今度ちゃんとしたの、買ってやるから////」
手に持っていた小さな翡翠の石の指輪が菊の右手の薬指にすっぽりはまった。
一瞬きょとんとして、それから、わぁ~と言って喜んだ。
派手でない小さな石は菊に似合っていた。喜ぶ菊をアーサーも満足げに見ていた。
「ありがとうございます!一生大事にしますっ。あ、もらってばかりでは何ですので……これを」
おもむろに棚から一つ指輪を取って、今度は菊が買ってきた。
「はい。つけてくださいな」
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