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「ぽち君にまで、心配かけてしまうなんて………私は重症ですね」
あなたなしで、生きられなくなってるんですから。
どうかしてますよね。
邪魔したくないのに、好きで、嫉妬してどんどん病んでいくみたいです。
それから何日経っても立ち直ることなんて到底できなかった。会議で見かけたって話すこともなくなった。目線すら……。
諦めなくては。
もう終わったことだから。
ある日の昼下がり。
最近起きるのが憂鬱で気づけば昼近く、なんてことが多くなった。今日もそう。
気分が冴えないまま玄関先に立った。
草履を履いて、扉に手を掛けた。
開けてやって来るのは陽の光。ここを開ければ、否応なしに「今日」と言う日が始まる。自分にとって何の希望もない「今日」が………
そう思った瞬間。
「――――ッ!!」
激痛が腹部に走った。
痛くて苦しくて耐えられなかった菊は踞<うずくま>った。
扉からずり落ちるようにしてしゃがみ込み、今までに経験したことがない程の痛みに耐えていた。
苦しくて涙がぽたぽたと落ちる。死んでしまいそうな痛さに、助けを呼べない絶望が絡まり意識がずるずると闇に引きずられていく。
異変に気づいたぽち君が側でどうすることも出来ずに鳴きまわる。心配そうに鼻を鳴らしてはまた助けを呼ぶように吠える。
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