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――――…
今思えば菊でいっぱいだった。自分が生きてきた中で一番長く笑って過ごした時間は菊と共にあった。
落ち込んだ時も、疲れた時も、あの柔らかい笑顔に幾度となく癒された。
突拍子なかったり、天然だったり、知りあわなければ見えなかったこともたくさん見せてくれた。
もう行くんですか?、次いつ会えますか?
たまにそうやって甘えてくれることが堪らなく嬉しかった。
俺はずっと菊に救われてきた。
ツンツンして素直に表現できないところも、菊は笑って全部汲み取って受け入れてくれた。俺は甘えてばかりだったのか。何でも許してくれるから、我が儘になって、菊を束縛していたのか。
ごめん――――
それでも、離れたくなかった。
大好きなんだ―――――…
考えに耽っていると、唐突にドアが開いた。
「おいアーサーッ!!大変だ!」
「何だよフランシス、騒々しいなぁ。ノックくらいしろ…」
「ばぁっか!そんな場合じゃねぇよ!倒れたんだ、菊が倒れたんだよッ!!」
「……え……」
息急き切って飛び込んできたフランシスからの知らせにアーサーは頭が真っ白になった。
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