愛の証~後編 (朝菊)

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「最近君たちおかしかったもんね。……結構前だけど、菊、廊下で泣いてたんだ」   「!! 泣いて……?」   「その頃からおかしかったのに気づいたんだ。君は?いつ気づいてあげた?………………もしかして、気づかなかった?」   「!?」     真剣味を帯びた問い掛けに息が詰まった。   泣いてたなんて、知らなかった。 様子はおかしかった。話し掛けても上の空な返事、誘いも断られることが多くて、何より会話自体がなくなっていた。     自分の不甲斐なさに今やっと気づいた。       「菊、一人でいろいろ抱えてたみたいだよ。俺が気づいて相談にのろうとしても結局、大丈夫とかってはぐらかされちゃったんだけど。…………………俺じゃ、やっぱりだめってことさ」     アーサーの肩をぽん、と叩いて病室から出て行く。 そのまま静かにドアが閉められた。         アルが出て行って部屋には沈黙がおりた。 しばらく迷ってからベッドに近づいた。そして菊の眠る傍らに腰掛けた。     久しぶりに見つめた菊の顔は白かった。いつもの笑顔の時よりずっと血の気がなかった。腕からは管が通って点滴に繋がっている。 自分が側に寄ればいつも微笑んでくれたその人は、今は深く眠って笑いかけてはくれない。       黙ってその姿を見ていると、右腕に目が留まった。   右手薬指にはめられた自分の瞳と同じ翡翠の石がついた指輪。   「……!!」
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