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―バンッ
(………………え)
大きな音とともに駆け込んできたその人は肩で息をしながらゆっくりと近づいてきた。
菊はまだ怠い体でそちらを見た。
見上げた顔は夕陽に染まった金髪のその人―――
「………………………あ、アー…サー、さん……?」
躊躇いがちにその名を呼んだ。いろいろな驚きがあったが、その出で立ちに慌てて上体を起こした。
「な、アーサーさんどうしたんですかっ?ずぶ濡れじゃないですか。早く乾かさな…………………って、すみません私は余計な口を………」
別れた私にはそんなこと言う資格はないと自嘲する。
まだ少し息があがり、紅潮した顔のアーサーは濡れた足元も気にせずさらに菊に近づく。そして俯く菊に握りしめた手を差し出した。
戸惑った様子で見上げる菊に、手を開いて見せた。
「……え………………………指輪……」
アーサーの大きな手の中で小さく光る桜色の指輪。
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