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菊は驚いた。
この指輪は自分がアーサーにあげて、別れの日にはもう彼の指にはなかったものだから。
混乱している様子の菊に、アーサーはここで初めて声を発した。
なくしていたことを伝えた。
「ごめん………俺は、勘違いしてたんだ。…………菊が……アルと仲いいことに嫉妬して、菊が最近ずっと素っ気なくて…………………だからッ、だから勘違いして勝手に裏切られた気分になって…………ッもう嫌われたんだって……それ…で……それで、ごめん!………ごめんなぁ……っ」
涙を流してまっすぐに見つめて謝るアーサーに菊も涙が溢れる。
そのまっすぐな言葉が、心が、菊の心のわだかまりを溶かし始める。
「謝ら、ないで………ください。……………私の方こそ……悪いんです」
大粒の涙を目にためて菊が話し出す。
「私も………………………嫉妬していたんです。アーサーさんと……セーシェルさんがいつも仲良くされているのを見ていて……………苦しくって、寂しくって………悔しくてつい、アーサーさんに冷たく……接してしまっていたんです」
アーサーは途切れ途切れになりながらも必死で伝えようとする菊を見た。
初めて聞いた今までの行動の理由に、お互いすれ違っていたことに気づいた。
お互いがお互いを想いすぎるあまりに起こった摩擦。
「それに………会いに来てくださるのも私のご機嫌取りなだけなのだと思って、いつも持って来てくださるバラが…花束だったのに、いつの間にか一本で…………もう、私のことなんて…………嫌いに、なってしまったのかと……愛してもらえないのかと……そう思うと涙がッいっぱい出て、隠しきれなくなって……………そんな不安な気持ちのまま、アーサーさんとお話したら全部っ…全部吐き出してしまいそうで…………………………いつの間にかアーサーさんといることが…………苦痛になってしまったんです。…………ご、ごめんなさいッ!!……ごめんなさいッ、我がままで、ヤキモチ妬きで、どうしようもなくて……ッごめんなさい……」
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