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もぅ我慢しなくていい、そう思ったら堰を切ったように涙がポロポロこぼれ落ちた。
涙で濡れた顔を伏せて絞り出すように語る。
その固く握って震える手をアーサーの手は優しく包み込んだ。ビクンと肩がはねて、涙に濡れた瞳で上目遣いにアーサーを見た。
アーサーは菊の存在を確かめるように手を握って、そして相手を労るように微笑んでみせた。
「そんな風に、悩んでたんだな………言い訳に…なるかもしれないが、最近外交とかが頻繁にあって、挨拶に花を持って行かなくちゃいけなくて摘んでたんだよ。でもせめて一本ぐらいは、菊のために取っておきたいって思ってたんだ」
「アーサーさん…………」
アーサーは嬉しそうに笑った。
「俺、どんなに忙しくても菊のこと考える時間はすっげぇ幸せな気持ちになるんだ。…………………それだけ俺の心は菊でいっぱいなんだよ……………菊なしじゃダメみたいだ」
そう言って優しく微笑んだ。それを見て菊は少し赤くなった。
「アーサーさん……………嬉しいです。毎日忙しくしていらしたので、私のことなど頭にはないと思ってました」
また菊の目からは温かい涙が溢れた。
どんな時でも自分のことを考えてくれていたことが嬉しかった。
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