縁日 (湾子菊)

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「いきましょうか!本田さん」   にっこり笑って言うと、小さな手手が遠慮がちに湾の指を握った。                       ―――――…… それからたくさんの出店が立ち並ぶ道を二人は手を繋いでまわった。 美味しそうな匂いに惹かれてカステラを買ったり、くじ引きをしたりして楽しんだ。目にも楽しい色とりどりの飴玉は二人してたくさん選んで買った。   湾はふと菊を見た。 普段は見上げてばかりだった菊を、今は自分が見下ろしている。なんだかくすぐったい気持ちになった。 いつも憧れていた人だった。優しくて、品があって、強さもあって。 湾にとってはお兄ちゃんというより一人の男の人という存在だった。 でも菊はきっと自分のことを妹、もしくは娘みたいに思ってるかもしれない。それが少し寂しかった。     ぼんやり歩いていると、菊がくいくいと湾を引っ張った。     「?」   菊は指差した。 その方向を見てみると、お面を売っている店があった。     「あれ、見てみましょっか」    「はい」     湾を見上げて嬉しそうに笑った。
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