縁日 (湾子菊)

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近づいて行くとたくさんのお面がかかっていた。 ひょっとこやおかめ、今時のキャラまで揃っていた。その中で湾は見知った顔を見つけた。     「あれ、……これって王さん家にいたような…………でもあれはもっとぶさいk…………」   言いかけてやめた。       「どれがいい?好きなの買ってあげる」   身を屈めて菊に顔を近づけた。すると少し頬を赤くして、こくんと頷いた。     きらきらした目で一面に飾られたお面を見上げる姿がなんとも可愛いらしくて、つい頬が緩む。     (あ~かわいい!きっと王さんもこんな気分で本田さんや私たちのこと見てたんだろうなあ)     そんなことを考えていると菊が背伸びをして、あれ、と指差した。   その先を見てみると。     「き、きつね!?本田さんあれがいいの??」   「はい。ダメですか?」   くりくりの目で訴えられて慌てて首を振る。   「そ、そうじゃないのつ!本田さんがいいなら、あれにしましょ」     結局きつねのお面になった。店のおじさんから受け取って菊に被せてあげると喜んだ。     「ありがとうこざいます」     でもやっぱり小さくても菊なんだなぁと湾は思った。小さい頃から大人っぽいというか…… 湾は菊に気づかれないように小さく笑った。         しばらく歩き続けて店がまばらになってきた。 菊の様子を横目で見てみると少し疲れているようだった。
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