縁日 (湾子菊)

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「疲れましたか?」   歩きながら声をかけた。   「え……あ、……………はい」   そう言って申し訳なさそうに俯いてしまった。 湾はそんな菊に屈んで背を向けた。     「じゃあ、はい。おんぶしてあげます」   そんな行動に目を丸くして驚いていた。     「え、でも、大丈夫です」      「遠慮しないでください。ほら!」   「…………………………はい」     そう聞こえると、背中に小さな温もりがしがみついた。                 「お寺に来ちゃいましたね。ここで少し休ませてもらいましょう」   そう言って菊を下ろした。縁日の光が遠くにぼんやり見える寺にきて石段に座った。 なんとなく慣れてきた小さい菊を無意識に自分の膝の上に乗せてみた。   「あ」     嫌がるかと思ったが意外とすんなり収まってくれた。自分に馴れてくれたと思うと嬉しかった。     すっかり暗くなって涼しい夜風が菊のさらさらの黒髪を揺らす。頭にはさっき買ったきつねのお面がついている。 いつも眺める背中が今は小さくて、少し、大きい時の菊が恋しくなった。
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