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ふと黒髪が揺らめいた。
気づくと自分の胸にすっぽりと菊の背中が預けられていた。不思議に思って顔を近づけると、微かな寝息が聞こえる。
(本田さん寝ちゃった……)
安らかな寝息と幼い寝顔に幸せを感じながらそっと髪を撫でる。柔らかな髪はいつも側に感じる匂いがした。きゅっと小さい体を包み込み、目を閉じると自然と髪にキスを落とした。
すると突然激しい風がふいた。ぎゅっと目を瞑って収まった時、ゆっくりと目を開けた湾の前には、
「ほ、本田さん!?………もとに、戻ってる!」
さっきと変わらぬ体勢で、湾の膝の上にのっているのは元の菊だった。
改めて感じる増した重み。腕の中にある愛しい人の寝顔に、何故だか真っ赤になってしまう。
「…………やっぱり、私はこっちの本田さんのが好きです」
Fin
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