夢のような (北欧夫婦)

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僕はこの季節になると忙しくなる。みんなが待ち遠しいサンタさんとして駆け回る。その日のためにずっと準備をする。       「ん」     「あ、スーさん!ありがとうです」     この人はずっと昔に一緒に家を出てきた時から二人で生活している。   最初は無口で威圧的な眼差しで怖くて仕方がなかったけど、今では本当に仲良く暮らしている。   スーさんと毎日一緒にいられて僕とっても幸せです!       一緒に暮らすようになってから、実はあんな顔して茶目っ気があるってことを知った。それに何かにつけて優しかった。おっちょこちょいでドジな僕をいつも側で見て助けてくれる僕の良き理解者だ。         12月。この時期に入ると僕の季節がやってくる。世界中の良い子のみんなにプレゼントを配りに行く一大イベントがある。この一日のために早くから準備を進めるに、いつからかスーさんも手伝ってくれていた。 こうやって準備する時間も、スーさんと一緒で楽しい。        そして当日。 願っていたホワイトクリスマスになり空気が凍るように冷たい夜になった。 僕は赤々と燃える暖炉の側で赤い服と赤い帽子を身に纏い大きい袋を担いだ。   玄関まで歩いて行くと後ろからスーさんもついて来る。     「それじゃあスーさん行ってきますね!」     「ん。気ばつ痒いて行ってこい」     そう言って柔らかなマフラーを首に巻いてくれる。その手つきの優しさ一つにドキドキする。     「はい!遅くなるかもしれないので先に休んでていいですよ。じゃあ、行ってきます」     そう言うとスーさんは優しく抱きしめておでこにキスをくれた。真っ赤になりながら家を後にして、そりにまたがった。
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