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正直余裕がない。
追い込まれるなんて俺、らしくない。
もやもやが晴れないまま気がつくとアーサーの家に来ていた。もちろんアポなしだ。
ノックもなしにドアノブに手をかけて引く。思いの外簡単に開いたドアの中に入っていった。
所謂不法侵入だ。
でも付き合っているんだから、と勝手に弁解をして明かりの洩れる部屋に足を踏み入れた。
愛しい人はそこにいた。
昼間に見たスーツの上着だけ床に放り捨ててソファに座って背もたれにぐったり全身を預けて眠っていた。
独り酒でもしていたのだろうワインのボトルが2・3本机に置いてあった。
その顔が近くで見たくてさらに近寄った。
さらさらの金髪に長い睫毛。酔っているので少し紅潮した頬。無防備に緩められたネクタイ。そのどれもがフランシスを欲情させた。
「……坊ちゃん……それは誘ってんの?」
言うが早いか体が勝手に動いて――…
気がつけばアーサーの上にまたがっていた。
勢いよく飛び込んだものだから近くに置いてあったワインのボトルを足に引っかけて床に派手な音で落としてしまった。
しかしフランシスは気にもしない。
「!?」
さすがにアーサーは大きな音と膝の上の重みに気づき、目を見開いた。
「あ、起きちゃった?」
「えっ……!?な、なんだよっなんでフランシスが///」
何が起こったか何故フランシスが此処にいるのか理解できず紅い顔をさらに紅くして慌てる。
そんなアーサーが可愛くていつものフランシスが現れる。
「やっぱ立ち位置はこうでなくちゃなぁ」
「なんの話だよッ!てか退けよ!!」
「ん?なんで?」
そう言って顔を覗き込む。
「お、重いんだよッ!!ばかっ///………………………あと、顔が、近い………///」
ぼそりと呟いて真っ赤になるアーサーを案外冷静に見るフランシス。
「…………」
「な///なんだよ………」
じっと瞳を見つめられて耐え切れなくなったアーサーは俯いた。
「そんなの………俺は許さないよ……?」
「!?」
悪戯っぽく妖しく笑ったフランシスは無理矢理アーサーの顎を持ち上げて唇を塞いだ。
驚いて抵抗しようとするアーサーの手を掴んでソファに押し付ける。
「んッ……………ふぁ///………あ、ん……////」
息をしようと開けられた隙間を割って舌が入り込む。酔ったままだったアーサーは激しく絡み合う舌に意識がふわふわして朦朧としてきた。
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