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「…………っ!!」
真夜中。当然辺りはまだ暗い。
そんな時フェリクスは目を覚ました。
「……………夢だし………」
ふぅと息をついて目の前、傍らに眠るトーリスを見た。
微かに寝息をたててこちらを向いて眠る愛しい顔を間近に見つめて、今見た夢を思い出す。
それは昔の夢―……
かつて二人が同じ家に住んでいた時の記憶。
その頃は戦争もしながらだったけれど一緒にいる時間が長く、始めは人見知りで上手く打ち解けられなかったフェリクスも面倒見のいい、しっかり者のトーリスにだんだんと心を開くようになって同じ家の中でいつも一緒に行動をするようになっていた。
「もーまたポニーと遊んでたでしょ!?いいかげん手伝ってほしいんだけどっ」
「え~やだし~。だってポニーが遊んでって言うんよ?」
「はぁ…しょうがないなぁフェリクスはー」
なんだかんだ言って楽しくやっていた。自由だった。
それは、いつもそばにトーリスがいたから。文句を言いながらでもいつもフェリクスを気にかけて甘やかしてくれていたから。
今考えると、そう思う。
しかし
現実は残酷で――…。
幸せの時間はそう長くは続かないもので――…
それまでの生活を打ち砕く現実にぶち当たった。
――――ポーランド分割
それは3度に渡る死戦の中でオーストリア、プロイセン、ロシアと激突した。
二人は幾度となく危険に曝され、二人力を合わせて乗り越えてきた。絆は深まり信頼も厚くなった。
だから余計に離れがたくなっていた。
しかし、二人は引き裂かれた。
大国ロシアによって。
「………トー……トーリスっ!!行ったらダメ…なんだし……!」
地面に倒れても手を伸ばす。
「フェリクス…!!」
その姿を見てトーリスも手を伸ばす。掴みかけた手は空をきる。
「だめだよ?大人しく来て。………トーリス君」
残酷に笑うそいつにトーリスは連れていかれた。もう掴めなくなった手を見て、寂しさと悔しさが胸を締め付けた。
「なんで、なんで…………」
もっと強ければ。
もっと大事にしてれば。
守ってあげられたのに……。
募る後悔と、今更ながらに知るトーリスへの想い。それは自然に溢れる大粒の涙となって頬を流れた。
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