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しんっと静まり返った部屋の中でお互いの心臓の音が聞こえる。
緊張するけれど、安心する音――…
「お会いできるのを楽しみにしていました。なかなか会える機会もないので電話をいただいたとき嬉しかったです。
あなたの顔を見られただけでこんなにも安心するなんて…」
盗み見た菊の顔は少し赤らんでいて
「!?………ギ、ギルさん?」
ギルは思わず後ろから抱きしめていた。
着物ごしの腕は細くて、小さかった。
「菊、お前はいつまでもちっちゃい奴だな!」
「お、大きなお世話ですッ」
「ははっ。…………俺も、会いたかった…」
耳元でボソッと囁かれた言葉に、いつものふざけた調子がないのに驚いて、同時に照れた。
そんな菊の綺麗な漆黒の髪にギルは頬を擦りよせた。
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